山崎 文夫 著
ISBN:4-86013-301-3 A5判/522頁 <労働法令発行>
発行年:2004/10/5 現在庫:有り
わが国における民事判例の積み重ねによる多様な論点の展開や、学説の展開、事業主に対して予防的観点から雇用管理上のセクシュアル・ハラスメント配慮義務を課した男女雇用機会均等法21条の制定により、日仏2カ国の比較法的研究による問題の解明に限界を感じた著者が、アメリカ合衆国や、比較的早期に法的対応がなされたイギリスの検討も加えてセクシュアル・ハラスメントを法的に考察したもの。旧版発行(2000年6月)後の関連立法、判例および学説等の激しい動きを加味して、大幅な加筆・改訂、章構成の追加をおこなった。
改訂版 セクシュアル・ハラスメントの法理
序
序章 セクシュアル・ハラスメントの社会的概念と法規制
1 セクシュアル・ハラスメントの社会的概念
2 セクシュアル・ハラスメントと法規制序章の二 セクシュアル・ハラスメントと法的アプローチ
第一節 セクシュアル・ハラスメント法理の形成
第二節 セクシュアル・ハラスメントと性差別アプローチ・人格権アプローチ
(a) 性差別アプローチと人格権アプローチ
(b) 女性差別から性差別へ
(c) セクシュアル・ハラスメントとジェンダー・ハラスメント
(d) セクシュアル・ハラスメントとハラスメント
第三節 セクシュアル・ハラスメントの法規制と法的概念
(a) セクシュアル・ハラスメント概念の拡大
(b) セクシュアル・ハラスメント概念の多様性
第四節 セクシュアル・ハラスメントの法規制と現在の課題
(a) セクシュアル・ハラスメントの予防
(b) セクシュアル・ハラスメントに対する事後の対応
小 結第一章 フランス刑法典セクシュアル・ハラスメント罪・労働法典・みなし解雇
第一節 フランスのセクシュアル・ハラスメント関連立法の概要
1 一九八〇年刑法典改正
2 新刑法典(一九九二年六月二二日の法律)
3 労働法典(一九九二年一一月二日の法律)
(a) 第一条
(b) 第二条
(c) 第三条・第四条
(d) 第五条
(e) 第六条~第九条
(f) 第一〇条
第二節 セクシュアル・ハラスメントの被害者保護と予防
1 セクシュアル・ハラスメント被害者の雇用保護
2 セクシュアル・ハラスメントの予防
(a) 使用者のセクシュアル・ハラスメント予防義務
(b) 加害者の懲戒処分
(c) 安全衛生労働条件委員会の役割
第三節 セクシュアル・ハラスメント関連立法後の判例
1 刑事判例
(a) C事件
(b) ルモー事件
(c) タケ事件
(d) シュルバヤ及びGTPR社事件
(e) ヴィアール事件
(f) W事件
2 民事判例
(a) T夫人対シーベル・スポーツ&ゲーム社事件
(b) Y夫人対塗装会社事件
(c) 社会活動中央金庫(第一)事件
(d) 社会活動中央金庫(第二)事件
小 結第二章 イギリスの性差別禁止法・雇用保護法・嫌がらせ規制法
第一節 セクシュアル・ハラスメントと雇用保護法
第二節 セクシュアル・ハラスメントと性差別禁止法
1 セクシュアル・ハラスメントと性差別
2 性差別禁止法の責任主体と手続・救済
3 性差別禁止法とEUの行動準則
第三節 セクシュアル・ハラスメントと刑事法・嫌がらせ規制法
第四節 セクシュアル・ハラスメントと不法行為
小 結第二章の二 イギリスの嫌がらせ規制法
第一節 アメリカのセクシュアル・ハラスメント概念
1 フェミニストのセクシュアル・ハラスメント概念
2 アメリカ判例とセクシュアル・ハラスメントの社会的概念
第二節 イギリスの嫌がらせ規制法とセクシュアル・ハラスメント
1 イギリスのセクシュアル・ハラスメント概念
2 一九九七年嫌がらせ規制法とセクシュアル・ハラスメント
第三節 わが国のストーカー規制法とセクシュアル・ハラスメント
小 結第三章 アメリカ公民権法と不法行為法
第一節 セクシュアル・ハラスメントと法
第二節 セクシュアル・ハラスメントと公民権法
1 公民権法とセクシュアル・ハラスメント
(a) 対価型セクシュアル・ハラスメント
(b) 環境型セクシュアル・ハラスメント
2 EEOCとセクシュアル・ハラスメント
(a) EEOCによる行政救済
(b) EEOCと企業のセクシュアル・ハラスメント・ポリシー
第三節 セクシュアル・ハラスメントと州公正雇用行為法
第四節 セクシュアル・ハラスメントと不法行為法
1 セクシュアル・ハラスメントと不法行為訴訟
2 セクシュアル・ハラスメントと不法行為類型
(a) 不法な身体的接触
(b) 不法監禁
(c) 故意の精神的加害
(d) 名誉毀損
(e) 違法侵入
(f) 労働契約侵害の不法行為
(g) 不当解雇
第五節 セクシュアル・ハラスメントと刑事法
小 結第四章 わが国の民事判例法理とセクシュアル・ハラスメント
第一節 わが国のセクシュアル・ハラスメントと法
第二節 セクシュアル・ハラスメントと不法行為判例
1 セクシュアル・ハラスメントと不法行為
(a) セクシュアル・ハラスメントと不法行為の成立要件
(b) セクシュアル・ハラスメントと不法行為成立の判断枠組み
(c) セクシュアル・ハラスメントと被害者の同意
2 セクシュアル・ハラスメントの類型と不法行為責任
(a) 強制猥褻等刑罰法規違反の不法行為
(b) 身体接触・交際強要及び拒否後の嫌がらせと不法行為
(c) 容姿等に関する侮辱的言辞、性的噂流布と不法行為
(d) 不法行為が成立しないとされた例
3 セクシュアル・ハラスメントと法人の不法行為・使用者責任
(a) 経営者のセクシュアル・ハラスメントと法人の不法行為責任
(b) 従業員のセクシュアル・ハラスメントと使用者責任
(c) セクシュアル・ハラスメントへの対応と使用者責任
第三節 セクシュアル・ハラスメントと使用者の契約責任
1 セクシュアル・ハラスメントと契約上の配慮義務
2 配慮義務の内容
(a) 施設整備義務
(b) 監督教育義務
(c) セクシュアル・ハラスメント自体と契約責任
(d) 誠実対応義務
(e) プライバシー保護義務
第四節 セクシュアル・ハラスメント被害者の雇用保護と加害者への対応
1 セクシュアル・ハラスメント被害者の雇用保護
(a) 被害者の解雇無効・損害賠償
(b) 被害者の退職とみなし解雇
(c) 労使間の信頼関係喪失と普通解雇
(d) 被害者の配転・自宅待機
(e) つきまとい禁止等の妨害排除
2 セクシュアル・ハラスメント加害者への対応
(a) 加害者とされる者に対する調査中の処遇
(b) 加害者の懲戒・解雇・退職
(c) 加害者の配転・査定
第五節 セクシュアル・ハラスメントに関するその他の諸問題
1 立証にかかわる問題
(a) 集中証拠調べ・被害者のプライバシー保護
(b) 被害者心理を考慮した心証形成
2 被害者・支援者に対する名誉毀損訴訟
3 時効
4 セクシュアル・ハラスメントと慰謝料の額
第六節 セクシュアル・ハラスメントと刑事責任
1 セクシュアル・ハラスメントと刑法上の犯罪
2 セクシュアル・ハラスメントと刑事規制
小 結第四章の二 セクシュアル・ハラスメントとPTSDに関する法的諸問題
第一節 レイプ・トラウマ・シンドロームとPTSD
第二節 PTSDの精神医学的評価
第三節 セクシュアル・ハラスメントによるPTSDと刑事責任
第四節 セクシュアル・ハラスメントによるPTSDと民事責任
1 セクシュアル・ハラスメントによるPTSDと不法行為
2 交通事故賠償におけるPTSD
3 セクシュアル・ハラスメントによるPTSDと休業損害・賃金請求
小 結第五章 セクシュアル・ハラスメント予防と男女雇用機会均等法・人事院規則
第一節 均等法・人事院規則上のセクシュアル・ハラスメント概念
1 服務規律としてのセクシュアル・ハラスメント概念
2 人事院規則のセクシュアル・ハラスメント概念
3 男女雇用機会均等法二一条のセクシュアル・ハラスメント概念
第二節 均等法の配慮義務とセクシュアル・ハラスメント予防
1 男女雇用機会均等法二一条の事業主の配慮義務
(a) セクシュアル・ハラスメントの一般的防止策
(b) 相談・苦情への対応による未然防止策
(c) 事後の迅速・適切な対応
(d) 当事者のプライバシー保護・不利益取り扱い禁止
2 人事院規則のセクシュアル・ハラスメント防止・対応措置
3 男女雇用機会均等法の配慮義務の私法的効力
4 均等法とセクシュアル・ハラスメント予防の可能性
小 結第六章 セクシュアル・ハラスメントと人格権アプローチ
第一節 セクシュアル・ハラスメントと性的行為
第二節 セクシュアル・ハラスメントと性差別アプローチ
第三節 セクシュアル・ハラスメントといじめ・嫌がらせ
1 フランスの社会近代化法
(a) 社会近代化法による改正の概要
(b) セクシュアル・ハラスメントとモラル・ハラスメント
(c) 加害者への懲戒処分義務・予防義務
(d) 被害者に有利な挙証責任制度
(e) 組合訴権
(f) 調停人による調停手続
2 イギリスの嫌がらせ規制法
第四節 わが国の法的アプローチと今後の課題第七章 セクシュアル・ハラスメントの諸様相と法的諸問題
第一節 セクシュアル・ハラスメントと合理的人間基準
1 逆セクシュアル・ハラスメントと法
(a) アメリカにおける逆セクシュアル・ハラスメントと法
(b) わが国における逆セクシュアル・ハラスメントと法
2 同性間セクシュアル・ハラスメントと法
(a) アメリカにおける同性間セクシュアル・ハラスメントと法
(b) わが国における同性間セクシュアル・ハラスメントと法
3 セクシュアル・ハラスメントと合理的人間基準
(a) アメリカにおけるセクシュアル・ハラスメントと合理的人間基準
(b) わが国におけるセクシュアル・ハラスメントの判断基準
第二節 セクシュアル・ハラスメントと恋愛の自由
1 アメリカにおける恋愛破綻型セクシュアル・ハラスメントと法
2 わが国における恋愛破綻型セクシュアル・ハラスメントと法
3 性的えこひいきとセクシュアル・ハラスメント
(a) アメリカにおける性的えこひいきと法
(b) わが国における性的えこひいきと法
小 結第八章 セクシュアル・ハラスメントと企業内自主規制
第一節 セクシュアル・ハラスメントと違法性の水準
1 アメリカ公民権法上の違法性の水準
2 わが国不法行為法上の違法性の水準
3 日米違法性水準の比較
第二節 セクシュアル・ハラスメントと企業内自主規制
1 アメリカにおける企業内自主規制
2 わが国における企業内自主規制
小 結第九章(結章) セクシュアル・ハラスメントとEU諸国及び日本の法的対応
第一節 EU諸国におけるセクシュアル・ハラスメントと法
1 セクシュアル・ハラスメントとアメリカ法理
2 アメリカ法理とEU諸国の対応
(a) フランス
(b) ドイツ
(c) イギリス
(d) EU
第二節 わが国におけるセクシュアル・ハラスメントと法
むすび文献目録
判例一覧
【書籍発行時点】 山崎文夫(やまざき・ふみお)
略歴
1949年千葉県野田市生まれ
明治大学大学院法学研究科博士後期課程修了
明治大学法学部助手を経て、現在明治大学講師著書
『フランス労働法論』(総合労働研究所)
『職場の労働法~採用から退職まで』(共著、法学書院)
『労働法』(共著、建帛社)
『プリメール社会保障法』(共著、八千代出版)論文
「退職金・諸手当・福利厚生制度の変化と法的問題」(日本労働法学会誌89号)など